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大手企業の情シスから地方中小企業の支援へ転身―CIO代行という働き方

大手企業で10年間、情報システム部門(情シス)として数々のシステム刷新に携わってきた早川優斗氏(37歳・仮名)。
安定したキャリアを歩んでいた彼が会社員を辞め、「CIO代行」という働き方を選んだ背景には、
家庭との向き合い方を見直す転機があった。
仕事に追われる日々の中で、ふと気づいたのは「子どもの好きな食べ物を知らない自分」。
この違和感をきっかけに、仕事と家庭のどちらも大切にできる働き方を模索するようになったという。
本記事では、大手企業で情シスを経験したエンジニアが、CIO代行として中小企業を支援する働き方を選んだ理由と、
CIO代行サービスの具体的な業務内容・価値について紹介する。
CIO代行とは
「CIO代行」とは、企業に常勤のCIO(最高情報責任者)がいない場合に、外部の専門人材がその役割を担うサービスを指す。
【支援内容の例】
- IT戦略の立案
- システム導入に関する意思決定
- 情報セキュリティ対策
- 運用体制の整備
特に地方企業や中小企業では、IT専任者が不在、あるいは総務・経理との兼任というケースも少なくない。
CIO代行はそうした企業に対し、現状の整理から課題の可視化、現場に根づく運用設計までを一貫して伴走する存在である。
外部人材をCIO代行という形で活用することで、
企業は初期投資や固定費を抑えつつ、必要なタイミング・必要な範囲で経営視点のIT判断を取り入れられる。
一方、担い手にとっても、特定の組織に縛られず、複数の企業に深く関わりながら価値を発揮できる働き方となる。
大手企業での10年間—エンジニアから情シスへ
今回取材したのは、CIO代行として地方企業のIT支援に従事する早川優斗氏(37歳、仮名)。
大手企業に10年間勤務し、エンジニアとしてキャリアをスタートした後、情シス部門へ異動。
基幹システムの刷新プロジェクトやクラウド移行など、社内のIT基盤整備に深く関わってきた経歴を持つ。
会社員から独立、CIO代行として地方中小企業を支援
早川氏が会社員として築いた安定したキャリアを離れ、CIO代行という働き方を選んだのは数ヶ月前のこと。
現在は3社の中小企業を担当し、IT戦略の整理からSaaS導入の設計、運用ルールの構築まで幅広く支援している。
地方企業ではIT担当が不在、もしくは一人情シスというケースも少なくない。
そのため、技術がわかり現場の気持ちも汲める人材は重宝される。
CIO代行を始めた理由——家族との時間を取り戻すための決断
――CIO代行という働き方を選んだ理由を教えてください。
「きっかけは家庭です。
会社員時代はプロジェクトが重なると帰宅が22時を過ぎることも多かった。
ある日、子どもの好きな食べ物を知らないことに気づいて、ショックを受けました。」
自分が家庭の時間に参加できていないことへの焦りが強かったという。
「仕事は楽しかったです。情シスの改革は終わりがなく、トラブル対応も多いですが、やりがいはある。
ただ、それと天秤にかけたとき、このままでは子どもの記憶に自分が残らないのではないかと思いました。」
リモート中心の働き方に可能性を見出す
そこから働き方を調べ、CIO代行という形に辿り着いた。
企業に常駐するのではなく、複数社をリモート中心で支援するスタイルは、家庭との両立を目指す自分に合っていると感じたという。
現在は3社の顧問として、経営層とやり取りしながらIT戦略を構築する立場にいる。
「働き方も裁量も、会社員の頃とはまったく違います。良くも悪くも全部自分次第ですが、その分やりがいは大きいです。」
CIO代行としての支援内容——地方中小企業のIT課題にどう向き合うか

現状の可視化から始める「棚卸し」
――現在、3社の企業を支援されているとのことですが、具体的にはどのような業務を行っていますか。
「一言でいうと、会社のIT周りを全て見直す役割です。
地方の中小企業では、IT担当者がいなかったり、兼任でやっていたりすることが多い。
気づけばツールもデバイスもバラバラで、誰が何を管理しているのか分からない状態も珍しくありません」
早川氏が最初に行うのは、徹底した「棚卸し」だという。
「システム一覧、契約内容、現場の業務フロー、紙で残っている運用…それらを全て並べて、まず現状を見える化します。
多くの会社が、困っていそうなところにツールを当てにいくんですが、実際に詰まっている原因は、まったく別の場所にあることが多いんです。
現状を整理しないまま進めると、『便利そうだから導入したけど、誰も使わない』
なんてこともあるので、まずは現状分析を徹底してます。」
小さく始めて運用を回す——無理のないIT導入
その上で、企業の規模と業務に合うSaaSを選定し、クラウド化を進めていく。
「いきなり派手な改革はしません。メールとカレンダーを統一するだけでも、まずは十分。
小さく始めて、運用が回ったら段階を上げていきます。」
支援の範囲はシステムだけにとどまらない。
- 運用ルールの作成
- アカウント管理の統一
- マニュアル整備
- 定例ミーティングの運営 など、
地道な部分こそ重視している。
現場とのコミュニケーションを重視
「最も多いのは、現場の人が困っているのに、誰もそれを吸い上げられないパターンです。
そのため、チームのSlackやチャットに入り込んで、雑談も含めてコミュニケーションするようにしています。
ITの導入は、最後は人の気持ちで決まるので。」
実際、導入に強く反発していたベテラン社員と、何度もオンラインで話し込んだこともあるという。
「最初は『前のやり方で困ってない』ってはっきり言われました。
でも、週1回の定例とは別に、雑談ベースで話す時間を何度かつくって。
業務の話だけじゃなくて、昔どうやって仕事してたか、とかも聞いたんです。」
数週間後、その社員から「この機能なら使ってもいいかも」と相談が入った。
「完璧に賛成してもらう必要はなくて、一緒に考える側になってもらえたら十分です。」
働き方の変化がもたらした価値観の変化

――CIO代行という働き方に変えて、一番大きかった変化は何でしょうか。
「時間の質が変わりました。会社員の頃は、空いている時間を家庭に回す感覚でした。
しかし今は、家庭を中心に据えた上で、仕事をどう組み立てるかに変わった。これは想像以上に大きかったです。」
早川氏は現在、基本リモートで各社の支援にあたっている。
ミーティングはオンラインで実施し、現場に行くのは必要なときだけ。
それが結果として生産性の高さにもつながっているという。
「会社員時代は、出社して席に座っているだけで一日の半分が終わる感覚もありました。
移動も会議も、本当に必要かと思うことが山ほどあった。今は自分でスケジュールを組めるため、無駄がありません。」
経営者視点でIT戦略を考える立場へ
働き方が変わると、仕事への向き合い方も自然と変わった。
「会社員のときは、任された範囲を全力でやる感じでした。
しかし今は、経営者と同じ視点で会社の未来をどう作るかを考えるようになった。責任は重いですが、その分やりがいがあります。」
家族との時間を取り戻せたことの意味
「やはり一番大きいのは、子どもと過ごせるようになったことです。
以前は帰ったら寝ている、朝起きたらもう保育園に行く時間……という生活でした。
しかし今は退勤後に一緒にご飯を食べられるし、お風呂も入れるし、寝かしつけもできる。」
「子どもが私の好きな食べ物を言い当てるのに、私は子どもの好きなものを答えられなかった時期がありました。
でも今は、今日はハンバーグの気分らしいと分かるようになってきた。それだけで、救われた気持ちになります。」
「働き方は、生活全体に影響すると実感しました。
仕事か家庭か、どちらかを犠牲にしないと回らないと思っていましたが、工夫次第で両立できます。」
これからの働き方と、CIO代行という選択
地味だが確実に企業を支える仕事
――最後に、これからの働き方についてどのように考えていますか。
「CIO代行は、派手さはありません。
最新テクノロジーを駆使して企業を劇的に変える世界ではなく、地に足をつけて、会社のITを日々着実に良くしていく仕事です。
ただ、その地味な積み重ねが会社の成長を支えます。」
IT担当がいない、専門知識を持った人材が社内にいない。
そうした企業は地方に限らず、全国に数多く存在する。
そして、そうした企業こそ現実的に運用できるIT基盤を求めている。
「私がやっていることは、『ちゃんと話を聞いて、課題を整理して、必要なところに必要なシステムを入れる』それだけです。
しかし、誰かがそれをやらないと会社は前に進まない。
だから私は、企業のITの右腕でいられるように、これからも丁寧にやっていきたいです。」
誰のために働くかを意識する
働き方を変えたことで、家庭との時間が増え、仕事への視点も広がった。
「会社員の頃より、今のほうが誰のために働いているかを意識します。
支援している企業の人たちも、家で待っている家族も、みんなが困らないように、ちゃんと役に立ちたい。それが今の私の軸です。」
まとめ——CIO代行という働き方の可能性
早川氏の事例は、CIO代行という働き方が、キャリアの選択肢として十分に現実的であることを示している。
特に以下のような経験や志向を持つ方にとって、参考になる働き方といえるだろう。
【CIO代行という働き方が向いている人】
- 情シス・社内SE・エンジニアとして、現場と経営の板挟みを経験してきた人
現場の事情と経営判断、その両方を理解した立場を通ってきた。 - ツール導入だけでなく、運用や組織の納得感まで考えてきた人
「入れて終わり」にせず、使われ続ける仕組みを意識してきた。 - 正解のない状況でも、自ら考えて動くことを厭わない人
前例がなくても、仮説を立てて一歩を踏み出せる。 - 家族や生活も大切にしながら、長くITに関わり続けたい人
働き方の柔軟性を保ちつつ、専門性を活かし続けたいと考えている。
地方中小企業におけるIT人材不足は深刻であり、今後もCIO代行のような柔軟な支援形態への需要は高まっていくと考えられる。
働き方の多様化が進む中で、早川氏のような選択は、今後ますます注目されるだろう。
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